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参加者も指導者もみんなで楽しむための集団指導のコツ

掲載日:2019/10/31

介護予防を目的とした集団での運動教室は、安全に進めることができるのか不安だったり、しっかりと運動できないのではないかと心配になったり、耳の遠い人への対応をどうするのか、指示が理解できるのか、模倣は大丈夫か…など、悩みはつきないと思います。
今回は、そんな悩みにお答えできるかもしれない、集団運動指導のコツをご紹介します。
キーワードは、「参加者が主役」です。

 

集団での運動指導時のコツ

その1:目や耳の低下に配慮する

目においては、動体視力や目で物を探すような視覚探索、明るさに対する感度、そして、視覚から得た情報を処理する能力などが徐々に低下します。耳においては、音を単語や文章として聞き分けたり理解したりするスピードが低下すると考えられています。また、目や耳の機能が低下すると、注意力や集中力が欠如するとも言えます。

集団運動指導では、目や耳の機能低下を予測し

➀指導者は参加者から見やすい位置に座り、動きを大きく見せる工夫をする
➁喜怒哀楽を大げさにする
➂単語をはっきりと話す
④多くのことを一度に伝えない
⑤騒がしい場所での活動を避ける

ことが大切となります。

 

その2:記憶力・認知力の低下に配慮する

老化によって記憶力が低下する傾向にあります。特徴として、“記憶の再生”(例えば、昨日の食事を書き出す)は低下しやすく、“記憶の再認”(例えば、昨日の食事を写真から選ぶ)は低下しにくいと考えられています。
また、外からの情報を処理する認知力も老化とともに低下すると言われ、“初めて”の行為(例えば、新しいテレビを操作するなど)に戸惑うことがあります。

集団運動指導では、記憶に残りやすいように声のトーンを工夫することや、大きな動作で見本を見せるといった指導に加えて、運動資料を配布して目で確認できるようにしましょう。慣れ親しんだ運動と初めての運動を組み合わせることで、記憶力・認知力の助けとなり運動継続の意欲へとつなげることができます。
 

その3:人の欲求を理解して居心地の良い居場所をつくる

人には主に次の5つの欲求があると言われています。

➀承認欲求:考えやわがままを認めてほしい、仲間に入りたい、過去を自慢したい
➁生存欲求:元気で長生きしたい、人の役に立ちたい、安心したい、生活に変化やハリが欲しい
➂知識欲求:新しいことを知りたい、知識を伝えたい、教養を身に着けたい
④安定欲求:役割が欲しい、中心的存在でありたい
⑤愛情欲求:愛情が欲しい、社交的でありたい、思いやりが欲しい、語りかけて欲しい

これらは誰にでもある欲求ですが、自分のこととして素直に認めにくい欲求とも言えます。人それぞれの表に出ない欲求を集団の中で理解し合うことで、居心地の良い空間を作りましょう。
 

その4:傾聴技法を活用する

相手の話を聴く傾聴の技法は、集団運動指導時に活用すべき大切なスキルです。同じ運動であっても、感じ方は人それぞれです。“人それぞれ”の部分を集団になるとついつい忘れがちになります。
集団であっても

➀感想や質問がでたら話をさえぎらずにうなずく・あいづちを打つ(同意・感嘆・共感)
➁参加者の表情や体の状態を観察する
➂沈黙を楽しむ(そっとしておく)
⓸参加者それぞれの感覚を受け入れる(判断・評価・批判しない)
⓹参加者の気持ちを理解するために自分の言葉に置き換えたり要約したりして伝える

などの傾聴の技法を上手に活用しましょう。
大切なことは、自分のあたりまえ・考え・やり方を押し付けないことです。
 

その5:コーチングスキルを身に着ける

コーチングとは、参加者も指導者もお互い尊重し認め合う関係づくりのことです。
“話を聴く→興味を持って質問をする→発見する→気づく→行動に移す→認め合う”を双方向に進めていきます。
そのためのスキルとして

➀観察(よく見て、よく聴く)
➁共感(一緒に学ぶ・喜ぶ)
➂受容(寛容に受け入れる)
⓸環境設定(不安を取り除き、開放的な雰囲気づくり)
⓹承認(“できない”よりも“できる”に注目する)

が挙げられます。運動指導中は、常に、参加者が発する情報を察知し拾い上げて、仲間と共有することが大切です。

 

集団での運動指導の実際

伝えたとおりにできない

参加者から見えやすい位置に移動し、動きを大きく見せるとともに、単語一つ一つをはっきりとわかりやすく伝えます。指導者の方法を振り返ることが大切です。
 

初めての運動をうまく伝えられない

参加者にとっての初めての運動は、そもそも「できない」のではなく、「知らない」のです。どうすれば脳と体で「知る」ことができるかを考えましょう。言葉の選び方、声の強弱のつけ方、見本の見せ方を再度確認しましょう。
 

「できないからやらない」という参加者がいる

他者との比較ではなく、自分の成長に達成感を得られるように導くようにしましょう。そのためには、参加者のできない気持ちを受容することから始めます。人にできないことを知られるのが嫌な場合は、観察をしながらそっとしておき、一歩前進できるようなヒントを全体への指示の中で伝えます。そして、いろいろな方法があることに気づいてもらい、仲間とともに共感できるようにしましょう。

 

参加者間の認知機能や体力のレベル差が大きい

レベルの低い人に合わせたり、平均に合わせたりする必要はありません。1つの運動でもいろいろな方法があって、1人ひとり実践方法が異なるということを仲間同士で認め合えるように導きましょう。他者も自分も承認できるような雰囲気づくりをするためには「運動方法に参加者を合わせる」のではなく「参加者に適した方法を提供する」ことを考え、一つの運動をあらゆる方法で説明できるような引き出しを増やしていきましょう。

 

まとめ

運動教室では、参加者も指導者も一緒に運動をしている仲間です。一緒に笑い、一緒に悔しがり、一緒に楽しんでみましょう。
自分の気持ちに素直で、偏りのない真っ白な心で取り組むことのできる指導者は、多くの人から受け入れていただけると思います。
「今日も楽しかった~」という時間を、参加者とともに創り上げていってください。

 

藪下 典子(やぶした のりこ)
「転倒予防」担当講師

アップテンヘルスサポート 代表、医療法人 八千代会八千代病院 健康指導員、メモリークリニックとりでデイケア室マネージャー、日本リハビリテーションスポーツ学会 理事兼事務局長
子どもから高齢者まで、障害や疾病の有無問わずに、多くの方々に運動を提供している。
博士(体育科学)、健康運動指導士、産業カウンセラー、保育士
多くの人が集える居心地の良い場所=運動教室にこだわり、運動教室の一員として、自分自身もその場その一瞬を楽しみながら活動中。

介護予防指導士とは

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