長寿化に伴って今問題となっているのが、介護人口の増加による社会保障費の増大です。それを抑制するため、「予防介護」が推奨されています。
予防介護はいくつかありますが、その1つとして高齢者に積極的に運動をさせる動きがあります。運動は基礎代謝を上げたり筋肉量を増やすなど、身体面だけでなくストレス発散やもの忘れ防止にもつながるといわれています。
では、若い人と同じように運動をしたら良いのかというと、そうではありません。高齢者の身体の特徴を把握し、それに合わせた方法が求められます。ここでは高齢者に運動を指導する際の注意点と、より確かな指導力を身につけるために今注目されている「介護予防指導士」についても紹介していきます。
高齢者の運動指導の意義
2017年の時点で日本人の平均寿命は女性が87.26歳、男性が81.09歳となっています。
しかし「健康寿命」という点に着目してみると2016年現在で女性が74.79年、男性が72.14年という結果でした。健康寿命とは、病気や介護の状態になることなく、健康体で過ごせる期間です。ここから言えることは、平均寿命から健康寿命を引いた数、女性で約12年、男性で約9年が意味するものを考えてみましょう。この2つの寿命の差の間の年数は、病気の治療や介護状態など、健康とは言えない状況にいることを意味します。つまり女性で12年、男性で9年、死ぬまでの間に何らかの健康上の問題を抱えるという結果です。医学が発達し、がんなどのかつては死に至る病だったものも飛躍的に治るようになりました。
しかしその一方で浮き彫りになっているのが、認知症をはじめとした介護問題です。そこで介護状態にならないためにも運動が注目されています。ただ体を動かせば良いというわけではありません。高齢者自身も体の衰えを少しは自覚するものの、気持ちの部分はそのままで、過信している方も少なくありません。ゆえに、ちょっとした段差につまずき、とっさの動きが間に合わず転倒し骨折するなど、思わぬケガにつながることも。健康になるための運動が、ケガの原因になってしまっては意味がありませんね。
安全に正しく運動をするためにも、指導を受けて行うのがポイントになります。
高齢者への運動指導で注意してほしい点
高齢者の運動を指導する前に必ず注意してほしい点があります。運動前には必ず本人の体力や体調を考慮して、絶対に無理をさせないこと。安全確保に気を付け、体力に合わせた内容で無理なく行うように指導していきましょう。
チェックポイント
- 血圧に異常がないか
- 熱や下痢、疲れなど体調不良がないか
- 水分補給は十分か
- 高齢者のスピードに合わせているか
- 適度に休憩をとっているか
運動をする上で重要なのは継続です。きついと感じるのはもちろん長続きしませんが、かといって楽すぎても筋肉に負荷がかからないので効果がありません。
運動を毎日行うのは筋肉にも負担になるため、1日おきの週2、3回くらいが理想です。
介護予防指導士とは?
高齢者向けの運動方法について詳しく身につけたい場合は介護予防指導士の資格を取得がおすすめです。取得すると、筋力訓練の指導やストレッチング、転倒予防などの指導を行うことができます。
この資格は日本介護予防協会が実施する講習を受講し、修了の認定を受けると取得できます。そのために必要な日数は3日間ほどです。予防介護への需要は今後も高まっていく一方なので、これから必要とされる仕事でもありますね。
受験対象者
介護予防指導士を受講するためには、介護福祉士や介護職員初任者研修修了者、看護師、社会福祉士などあらかじめ介護関連、または指定の医療や看護関連の有資格者が対象になります。
受講内容について
介護予防指導士の受講科目は、10科目(講義と実技)で、合計21.5時間です。
科目紹介
介護予防概論 | 2.5時間 |
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栄養ケア | 1.5時間 |
口腔ケア | 2時間 |
筋力訓練指導 | 2.5時間 |
ストレッチング | 2時間 |
転倒予防 | 2時間 |
測定と評価 | 2.5時間 |
リハビリテーション | 3時間 |
救急蘇生 | 2時間 |
認知症ケア | 1.5時間 |
資格取得後の進路
介護予防指導士を活かせる職場は介護や福祉関連の施設、病院などが中心となります。しかし予防介護は若いうちから行うことが肝心、今後の需要を受けて現役世代の多い一般企業からニーズがある可能性も十分考えられます。
一度取得すると更新がないため、生涯現役でできる職となることが期待されています。
まとめ
運動機能を維持し基礎体力をつけるなど、高齢者にとって定期的に運動する習慣をつけることは介護予防に大きく貢献します。
しかしそのためには安全確保が必須となり、転倒などでケガをしないように気を付け無理のない範囲で行っていかなければなりません。そのための運動指導を身につけるために、介護予防指導士の資格をとる人も増えています。